kyoto guest house kazariya

‘かざりや日記’ カテゴリーのアーカイブ

ほんとうのお別れ

2021 年 5 月 16 日 日曜日

錺屋の建物から退去し、手の届かない存在となって3ヶ月。

変わらず五条通りに佇むその姿を、壁からはみ出る青もみじを見るのが切なくて、前を通るのを避ける日々。

ここ最近は、錺屋を去る日の動画を編集するために、撮り貯めた館内の映像をたくさん見て過ごしていました。
完成したのはこちら*

つい先日のこと、突然の電話で解体の決定を知りました。

五条通りに面した好条件な土地ゆえ高額で、早々には売れずに建物は残るんじゃないか。

建物を壊さず活かしてくれる人が現れるかもしれないという一縷の望みもありました。

売れるまでの間、コインパーキングとして運用されるそうです。

言葉になりませんでした。

解体前に、建具や家具、照明器具、金具などのパーツを救出に入らせてもらいました。

3ヶ月ぶりに入った館内は、あの日のまま変わらず、美しいままでした。

青もみじはさわさわと体を揺らし、苔はみんな剥がして引っ越したのに、また増えていて。

まだまだ生きられるのに、どうしてなんだろう…

撤去作業はまるで大事に手入れしてきた建物に、自ら手をかけるようで、胸がシクシクしたけれど、それでもこのまま壊されるよりかは、ずっといい。

少しでも救ってあげたい。小さな金具一つにも、愛着がある。

持ち出せるものは全て持ち出したけど、ほとんどは置いてくるしかなかった。

何も知らない人に壊されて、何もなかったかのようになるのがつらい。

自分のものであれば…何度思ったかわかりません。

京都の地価が高騰する中で、自分のものにするのは夢のまた夢のような話でした。

もちろん仁王立ちしてでも止めたかったし、どうにかできないか模索もしたけれど、私にはどうにもできなかった。

私たちと心同じく、愛してくださった常連のお客さまへ、

せめて会えなくても、元気にしていてくれたらよかったのに…

お別れも言えず、遠くから眺め悲しむしかできない状況となってしまい、本当に申し訳なく思います。

大事に想ってくださってありがとうございました。

時が、花が、風が、やさしく癒してくれますよう、祈っております。

命あるものだからこそ、いつか終わりは来る。

65年ぶりの早い梅雨入りだそうですが、錺屋の建物の涙なんじゃないでしょうか。

閉店を目前に振り子時計が動かなくなってしまったのも、なんだか意思があるように思えてなりません。

早すぎたけど、この建物の最後の時を一緒に過ごせたこと、お世話をできたことを誇りに思います。

選んでくれて、ありがとう。

そうそう、このコンロも手元に戻ってきたしね。

パン、焼けるんだもの。

ゲストハウス錺屋
女将 涼子

【節分】

2021 年 2 月 14 日 日曜日

今年の節分は124年ぶりに、2月2日でございました。
それだけでも印象深いのですが、コロナの影響で京都の節分祭はほとんど中止。
厄除けは各自でやってくださいということでしょうか。
そんなわけで閉店後の片付けの合間に、錺屋で豆まきをして過ごしました。

今年の福豆、コンペイトウが入っててかわいい。
撒いたら鬼喜んでまいそう。

「鬼はそと、鬼はそと、福はうち、福はうち」

このお家にとって、最後の豆まきとなることでしょう。
すべてのお部屋に心を込めて豆をまき、厄を祓って、このお家のしあわせを願いました。
一緒に過ごせるこの数週間、一緒に過ごせなくなるその後も、どうかしあわせであって欲しい。

最後は玄関で、「鬼はそと、鬼はそと、福はうち、福はうち」
ぴしゃりとドアを閉め、鬼を追い出します。

そして七輪で鰯を丸ごと焼きました。
鰯の焼けるいい匂いがお空へ登ってゆきました。

そして恵方巻をまるかぶり。

季節を分かれ目、節分。

暦の上ではもう春なんですね。

あゆみさんが豆をまく動画も作ってみたので、ぜひご覧くださいませ


・・

ゲストハウス錺屋
女将 涼子

ラストチェックアウト

2021 年 2 月 13 日 土曜日

最後の夜は、いつもの常連さんと、いっぺん泊まってみたかったとご予約いただいたお客さまと、元スタッフのゆきみちゃんとで満室。
ぎりぎりまで、錺屋の夜を堪能しました。
ゲストハウスらしい夜を。

そして迎えた朝、ラストチェックアウト。
早々にチェックアウトされたお客さまのお部屋には、置き手紙とお菓子が。
ゆっくりチェックアウト組のお客さまとは、お庭を見ながら昔話を。
きっとお客さまもチェックアウトしたくなかったし、
私もチェックアウトして欲しくなかった。

名残惜しかったけど、記念撮影をして、最後のお客さまをお見送りしました。
最初のお客さまのチェックインよりもずっと…胸にくるものがありました。
それが12年の重みだったのかなぁ。

いつも通りお掃除するかなと思っていたら、
あゆみさんがお花とケーキを持って、お疲れ様を言いにきてくれました。

この日の写真は、涙なしには編集できませんでした。

ほんのひと時だったけど、錺屋がお宿として息をしている最後の時間を、空気を、吸っておきたかったのだと思います。
あゆみさんは元お客さま。スタッフでもあり、一番のファンでもあると。

そして各お部屋や水回り、お庭など全てに、感謝の意を込め深々とお礼をしてまわるあゆみさん。
12年間、毎日毎日、錺屋で在ってくれたこの建物に、ありがとう。

何より支えてくださったすべてのお客さまに、
そしてスタッフのみんなに、ありがとう。

この日より、お宿としてのお役目を終え、
退去までの2週間、建物との最後の時間を愛おしみながら、片付けと撮影とに追われるのでした。
まるで終活のような、人生で一番濃い2週間・・・

それはまた次のブログで。

ゲストハウス錺屋
女将・涼子

最後の週、楽しい日々

2021 年 1 月 31 日 日曜日

1月の20日以降、閉店前ということで、常連さんや元スタッフ、また一度来てみたかった…!という京都や隣接県にお住まいの方にお越しいただき、時節柄個室一名利用がほとんどで、人数こそ少なくとも有難い満室続き。


昔のような、ゲストハウスらしい…錺屋らしい夜と朝が来て、本当に幸せでした。

錺屋のことお話したり、写真を撮ったり、ずっと一緒に過ごしました。

寒さのやわらいだ日には、もうできひんかなと思っていたテラスランチも。
テイクアウトした洋食ますやのランチBを、お皿に盛り直して。

お宿仲間の女将ーずにも揃ってお越しいただきました。
開業時にお世話になりまくり…一緒に壁塗りまでしてくれた和楽庵女将も、錺屋にお別れを言いに来てくださいました。

それから、お花もたくさんいただきました。
館内中いい香りのお花に囲まれて、まるで春がやって来たようでした。

こちらは早咲きの桜。
もうこの場所で春を迎えることは叶わないと思うていたので、とっても嬉しかったです。

今までに錺屋で撮った写真を、小さな写真集にして送ってくださった常連さんも。
素敵すぎるプレゼント。

こちらも常連さん、ドミトリーが好きなので、部屋に似合うお花を選んでくれたとのこと。

ゲストノートには、常連さんからの直筆メッセージが残されていました。
文章からも、文字からも、帰る場所を失う寂しさが伝わってくる。

私ももう少ししたら、同じ気持ちを味わうに違いない。

他にもお泊まりのお客さまが、客室で狂言と三味線を演奏されるのをお庭から楽しませていただきました。

時節柄、生の芸を鑑賞するのも久しぶりで、とっても豊かな気持ちに。

この建物が聞く、最後の和の音となることでしょう。

そして最後のお茶室のご利用がございました。

準備のため事前にキッチンでお湯を沸かしている間、雪柳と湯気が美しく見とれました…

寒い中、お茶室を活かしてくださって、有り難うございます。

いただいた甘いもんや、コーヒーなども、〇〇さんありがとう…とお顔を思い浮かべながら、スタッフと休憩時においしくいただき、癒されております。

皆々様、ほんまに有り難うございました。

もりだくさん、めいっぱい。

退去の準備なんて一切せずに、忘れて楽しみ尽くしました。

目の前の光景が、ここで過ごす時間が、あまりに貴重で、尊くて。

実感のわかぬまま、最後の1日を迎えようとしておりました。

続きはまた次回。

ゲストハウス錺屋
女将・涼子

鏡開きと、書き初め

2021 年 1 月 7 日 木曜日

京都の鏡開きは少し早く、4日が一般的。

鏡開きには年神様をお送りし、お下がりの餅を食べることでその力を授かるという意味があります。

お鏡さんを飾ることと、それをいただくことはセットなんですよね。

刃物で切ってはいけないので、木槌で割ったり、手でちぎらねばなりません。

今回割りやすい様、前夜より水に浸けておりましたが、それでも結構苦戦。

こんなに叩いでええの?ってくらい叩きました。

京都の鏡開きは早いけど、それでも外側はかなり硬い。

7日や15日に開いたら、どうしようもなくて、油で揚げるしかないって言う…

今回は茹でて(チンして)クタクタに柔らかくしてから、バターを溶かしたフライパンでこんがり焼いて、少し水分を飛ばしてから美味しくいただきました。

新しい年の無病息災を願って。

お鏡さんをいただいた後には、書き初めをしました。

墨を磨るあゆみさんの慣れた手つき。

しゅ、しゅ、という静かな音。

たちこめる墨の匂いが懐かしく、心地よく。

とても不思議なんですけれど、癒しというのか…

真っ白な気持ちになりました。

新年の行事って、やはり相応しいものばかりなんだなぁと思いました。

あゆみさんが時間を、心を、込めて磨った墨。

文字にもちからがありそうです。

鏡開き、書き初め、それぞれ動画にまとめてみたので、ぜひご覧ください*

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錺屋女将  涼子

新年のご挨拶

2021 年 1 月 1 日 金曜日

2021年、寒いけど晴れやかな元旦でございました。

皆さま、明けましておめでとうございます。

本年も何卒宜しくお願い致します。

さて大晦日に突然閉店のお知らせをしてしまいまして…。

心をざわつかせてしまった様で、大変申し訳なく思っております。

そして明けた本日、たくさんの応援やあたたかなお言葉、ご予約をいただき…本当に感謝でいっぱいです。

さて元旦の錺屋はというと。

あゆみさんが今年も今宮さんの破魔矢を持って、新年のご挨拶に来てくれました。

そして元旦にも関わらず、ケーキを差し入れてくれました。

ケーキ屋さんて、案外お正月営業してるところも・・・

ついてたベリーのソースで、錺屋の「カ」をお皿に書き、

楽しくなったのか、マフラーを駆使した人文字で「カ」も作ってくれました。

お正月はゆったり営業ですが、最後の1ヶ月というところで、月末、週末を中心に少しづつご予約いただいてまいりました。

ドミトリー1組制限を設けているせいで、最終週のドミトリーは早満室に。

皆さまどうぞご無理のない様、当日の体温・体調とご相談の上、安全な旅を心がけてくださいます様お願い申し上げます。

皆さまにお会いできますこと、とっても楽しみしております*

ゲストハウス錺屋
女将・上坂涼子

ゲストハウス錺屋、閉店のお知らせ

2020 年 12 月 31 日 木曜日

皆さまのあたたかな応援によりこの12年間、この場所で「錺屋」を営んでまいりました。
私にとって初めて作った場所であり、それを大切に思ってくださるお客さまと、居心地が良いと思ってくれるスタッフと、とても良い関係を築くことができました。日常でありながら、過ごしたその時間の全てを愛おしく、宝もののように思っております。

錺屋は、老舗の薬屋の事務所として使われていたものが貸しに出ており、私がそれに出逢ったことで始まりました。
ゲストハウス(お宿)という形で開業をしてからは、皆さまからのご支援をいただき、このお家のお世話を預かりました。

この建物が長く生きられるように。いつでも皆さまがここに来られるように。
それはいつしか使命となり、とても幸せな毎日でした。
ずっと変わらない、いつもの京都、いつもの錺屋。
いつまでもそうありたいと願っておりました。

皆さまにだいじなご報告がございます。
この度、来年2月以降の賃貸契約延長が叶わず、2021年1月末をもちましてゲストハウス錺屋としての幕を下ろす事となりました。

目まぐるしい世相の中で直前まで延長があり得るかもしれないという諦めきれない願いと、この場所での日々に終わりが来るという大きな現実を受け入れられない思いで、気持ちの整理がつかず、このような直前のお知らせとなってしまいましたこと、ご容赦ください。

12年前とはすっかり時代も変わってしまったのに、「錺屋」が変わることなく続けて来られたのは、皆さまに思って頂けたからこそです。
本当にありがとうございました。

最後かもしれないと迎えた本年が思わぬ年となり、海外からのお客さまも含め、いつもならお会いできたはずの沢山の方々にお越しいただけなかったこと、口惜しく思います。残された1ヶ月、この場所と向き合い、別れを惜しみながら1日1日を大切に過ごしたいと思います。

お宿としての営業は1月31日迄となります。昨今の時節柄無理のないようお願いした上でなのですが、お越しいただけましたら、私たちも建物も、とっても喜びます。

建物とはお別れしなければなりませんが、それでも「錺屋」をかたちづくるものや、私たちスタッフにはその先があります。
場所は変われど、日常は続いていきます。
春になれば味噌を仕込み、夏には梅しごともするでしょう。
秋には七輪で秋刀魚を焼き、冬には餅花をつくります。
日常をだいじに愛おしみながら。

「錺屋」という宿としての場所やかたちはなくなりますが、そこで守り育んできたかたちのないものこと、長い時間をかけて受け継がれてきたもの、心や魂は決して消えることはありません。
今後は場所を京都の片隅に移し、つつましやかなくらしぶりや我々の元気な姿、愛するモノコトや風情を光に乗せてお届けして参ります。
現在のホームページはリニューアル予定です。離れていても錺屋の風を身近に感じていただけるようなサイトにしたいと思っています。

これまで宿という場所を介したコミュニケーションでみなさまと錺屋は繋がりを頂いてまいりました。しばらくはバーチャルの世界を介したコミュニケーションになりますが、大変な時代だからこそ、ゆるやかにでも皆さまと繋がっていたいと思います。
SNS等をフォローいただいて、これからも錺屋を見守り続けてくださいませ。

そしていつかまた宿として、再びお会いできる場所も夢に見ながら、これからも歩んでいきたいと思っています。

今まで通りお宿として営業を続ける姉妹店「月屋」、
そしてこれからの「錺屋」を、何卒宜しくお願い致します。

それでは皆さま、どうぞお元気で、良いお年をお迎えください。

錺屋女将 上坂 涼子


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お泊りは姉妹店月屋へ http://tsukiya-kyoto.com/


年末年始のGoTo除外について

2020 年 12 月 19 日 土曜日

誠に残念なことに、新規予約・既存予約を問わず、全国においてGoToトラベルキャンペーンの一時停止が決定致しました。
詳細はこちら


12月28日(月)から1月11日(月)までの間の宿泊を旅行日程に含む場合は、割引対象外となってしまいます。

既存予約(12月14日(月)24時までにされていた予約に限る)について、12月24日(木)まで、無料でキャンセルできるとのこと。

この停止の決定は旅行自体の自粛を促す意味合いもございますので、キャンセルの際はどうぞお気遣いなさいませんよう。
また状況が落ち着いた際に、ご利用いただけましたら幸いです。

そして割引除外の状況下でもお越しいただけるお客様には、こちらも感染症対策をできる限り徹底し、心を込めてお迎えさせていただきます。

12月28日(月)から1月11日(月)間の新規のご予約は、
こちらより承ります*
規料金オンライン予約

1月11日(月)から1月31日(木)間の新規のご予約は、
こちらより承ります*
GoTo割料金オンライン予約

ご予約お待ちしております!

今年の紅葉

2020 年 12 月 12 日 土曜日

今年の紅葉は、どきっとするほど赤が濃い。

つい先日まで、干し柿の方が赤かったのに。

閑散期の今更ながら見頃となり…写真をいっぱい撮ってあげました。

落ち葉は茶色くなる前に、拾い集めてあげる。

赤と緑のコントラストがとってもきれい。

夏に庭師さんに剪定してもらったおかげかなぁ。

隣にビルが建って日照条件悪くなったのによく頑張ったね、もみ太郎。

綺麗に染まってくれてありがとう。

錺屋女将 涼子

イギリストーストと舞妓さんちのまかないさん15巻

2020 年 11 月 27 日 金曜日

舞妓さんちのまかないさん 15巻が届きました。

幼馴染3人の、ちょっと甘ずっぱい内容でしたね。すーちゃんかわいい…

最新15巻はこちらから*

アニメ化の続報、NHKワールド JAPAN(海外のみ)で2021年2月から、Eテレで2021年秋から放送がスタートする予定だそう。

日本での放送はちょっと先やけど、楽しみですね♪

アニメ情報とPVはこちらから

先日、舞妓さんちのまかないさんに出てきたお料理を再現しようの会が催され、青森のソウルフード・イギリストースト(工藤パン)までお取り寄せ。

こちらは青森の郷土料理ひっつみ汁(一晩置いてしみしみバージョン)

本当にあったまるし、もちもちして美味しかったです*

15巻にも再登場しましたね。

イギリストーストは、マーガリンとお砂糖が挟んであって、ほんのりしょっぱい、なんだか懐かしい味のパン。

青森出身の友人は、週一で食べてたというてました。

京都にそんなパンあるやろか。志津屋のカルネ…?

発売当時小学館さんに送っていただいてから、たくさんの方に手にとっていただいた、舞妓さんちのまかないさん 1巻。

ちょっと古本感が出てきていたのですが・・・先日ファンだという男性に、ご宿泊の際新しい1巻を寄贈いただきました。 有り難い*

少年サンデーだけに男性ファンも多く、最近はGoToトラベルキャンペーンの恩恵もあってか、ご宿泊いただく機会も増えたように思います。

ぜひ、キッチンで“舞妓さん再現めし”作ってみてください*

錺屋女将 涼子

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